陶酔の意味・使い方
【読み】 とうすい
【意味】
- 気持ちよく酔うこと。
- 心を奪われてうっとりすること、その境地にひたること。
- 自分自身に対して、酔いしれること。
「陶酔」という言葉は慣用句的な表現として使われることが多く、
たとえば「自己陶酔」や「心酔」などの言葉と併用される場合もあります。
「自分自身に酔いしれる」の意味がナルシスト的であるように、
プラスイメージのみならず、マイナスイメージでも使われることがあります。
また、明治時代の純文学を初め、文学作品でも多く使われてきた表現の一つです。
「陶酔」の使い方をマスターすれば、
「気持ちよい」という感情を詞的に伝えられるようになるかもしれません。
ぜひ覚えてみてください。
①気持ちよく酔うこと
「陶酔」には、 「気持ちよく酔う」という意味があります。
「酔う」元々の意味、「酒に酔う」ですね。但し、泥酔ではありません。
例文
- 勝利の美酒に陶酔する。
- 活け造りの刺身の味に陶酔していた。
- ほどよく酔って、陶酔境の状態にあった。
②心を奪われてうっとりすること、その境地にひたること
「陶酔」には、 「心を奪われてうっとりすること、その境地にひたること」
という意味もあります。
美しい事物に接した時などに使われている表現です。
例文
- 名演技に陶酔する。
- 音楽に陶酔した彼らは、うっとりとした眼をあげて聴き入っていた。
- 彼女は都の風情の中に陶酔していたわけではなかった。
③自分自身に酔いしれて、平常心を失うこと。
「陶酔」には、「自分自身に対して、酔いしれること」という意味があります。
この使い方は、マイナスイメージで使われています。
例文
- 彼女は自分の才能に陶酔し、ライバルの優秀さを客観視することができないようだ。
- 満塁ホームランを打った直後、彼は陶酔状態にあった。
- 自己陶酔というのは、ある意味、ナルシストのようなものだ。
語源
陶酔の 「陶」
「陶(とう)」という漢字には、
もともとの「焼き物」という意味以外に
教え導く、打ち解けて楽しい、もやもやして晴れない、
という意味もあります。
「陶酔」では、「打ち解けて楽しい」という意味が使われています。
「陶酔」がもつ、プラスイメージのほうですね。
陶酔の 「酔」
「酔う」という意味以外に「理性を失う、自制心を失う」という意味もあります
「陶酔」の持つ、マイナスイメージのほうです。
陶酔が使われる熟語
「陶酔」 は美しいものや素晴らしいものを見たときに、うっとりする気分のことという意味を指すと同時に、場合によっては気分の良いあまり、うぬぼれて理性や自制心を失った状態という意味を指すようになりました。
こうした意味を持つ言葉であることから、陶酔を構成する熟語は限られていますが、以下のようなことばがあります。
- 陶酔境
- 陶酔感
- 陶酔状態
陶酔境の意味
適度のアルコールに酔ったときの、うっとりとして気持ちよい状態を示します。
美しいものを見聞きして、うっとりした気持ちになった時にも使うことがあります。
陶酔感の意味
心地よく酔いしれたような心持、快楽の境地に浸った感覚を指します。
覚醒剤の作用を表現する言葉としても使用されます。
陶酔状態の意味
うっとりして我を忘れている状態、自己陶酔している人のことを指す言葉です。
陶酔と心酔はどんな違いあるの?
「陶酔」に似た言葉に「心酔」があります。
次の様な意味を持っています。
・ある物事に心を奪われ、夢中になること。
・ある人を心から慕い、尊敬すること。
物事や人物の出来栄えなどに心を奪われること、心から尊敬することを指します。
「陶酔」には、まさしく「酔っている」かのように、
或いは正気を失っているかもしれないようなニュアンスが含まれますが、
「心酔」 に マイナスのイメージが含まれることはありません。
また
「陶酔」が、
比較的短い時間軸の場合に使うのに対して
「心酔」は
長い時間軸の状態に対しても使います。
・その小説を読み終わった直後の彼は、夏目文学に陶酔したような表情をしていた。
・彼は学生時代から、夏目漱石の文学に心酔している。
陶酔の類義語・対義語

あたかもほろ酔いで良い気分になった状態、或いは素晴らしいものに出会ってほろ酔いのような気分になった状態、または酔ったように自分を過信してしまった状態を指して使うことばということを、ある程度ご理解いただけたかと思います。
となると、対義語は、醒めた状態を表す言葉になりそうですね。
さて、以下に「陶酔」の類語を挙げてみようと思います。
- 傾倒
- 傾注
- 恍惚
類語①「傾倒」
心を打ちこんで慕うこと
- 夏目漱石全集を読破すべく、彼は全力を傾注した。
- 個人プレーよりも、組織的考察に傾注する必要がある。
- 苦手分野に努力を傾注したのだが、花開くことはなかった。
類語②「傾注」
一つの事に心や力を集中すること、心を打ちこむこと、
という意味を持ちます。
- 夏目漱石全集を読破すべく、彼は全力を傾注した。
- 個人プレーよりも、組織的考察に傾注する必要がある。
- 苦手分野に努力を傾注したのだが、花開くことはなかった。
類語③「恍惚」
「心を奪われてうっとりしている様子」 の他に、
「ものごとがはっきりしない様子」
「病的に頭がぼんやりしている老人の様子」
の意味もあります。
- 夏目漱石の小説を読んで、彼は恍惚たる心持になっていた。
- 長年の宿敵を倒したその武将は、しばし恍惚とその城にたたずんでいた。
- 一日中なにもせずに、恍惚と座っていた。
対義語①「覚醒」
特定の物事などから現実に引き戻されること。もともとは生理学用語で、脳の生理的状態。 転じて、迷いから醒めて過ちに気付くことにも用いる。
- 昏睡状態から覚醒しても、暫くのあいだは食事を自分ですることが出来なかった。
- 新興宗教の迷信から覚醒した彼は、昔と同じように家族を大切にするようになった。
- ポピュリスト政党の跳梁を許さない為には、何よりも有権者の覚醒が待たれるであろう。
対義語②「幻滅」
幻想から覚めて、現実に戻って余計にがっかりすること。美化され理想視されていた事象が実は幻だったことを思い知ること。
- 美女だと思ってたのに、食事に行ったらあんな食べ方されて幻滅した。
- きらびやかではあるが、無味乾燥した都会生活に幻滅する。
- 現世に生きることを、「 幻滅の世に彷徨する」とたとえていた。
対義語③「嫌悪」
憎みきらうこと、強い不快感を持つことを指します。
- 石田三成は、不正を嫌悪すること甚だしく、杓子定規と言われていた。
- 長期政権の独裁体質に対して、国民の多くは嫌悪感を抱いていた。
- 酔いから醒めると、昨夜の酔態を思い出して自己嫌悪に陥った。
陶酔の英語表現

近い言葉としては、be on a high(テンションの高い状態)、あるいはbe fascinated with(魅了される)が挙げられます。
また、少し硬い言い方ですとbe intoxicated by があります。
文学的表現を訳すような場合に使うと、お株が上がるかもしれません。
興奮した、感動した、という意味で訳されることが多い
例文①: be on a high
The boy was on a high as the girl-friend kissed him.
ガールフレンドに接吻されて、彼は酔ったようにうっとりしていた。
例文②:be fascinated by
He was fascinated by the beauty of the picture.
彼は絵画の美しさに陶酔した。
まとめ
「陶酔」は、 「ほろよい加減で、うっとりすること」を意味します。
陶然と酔うこと、気持よく酔うこと、喜ばしいことに酔いしれること、
という意味で使われる言葉です。
こうした状態を表す類義語には「傾倒」「傾注」「恍惚」などがあります。
また、英語では be on a high as, be fascinated byと似た表現があります。
文学作品でも多く使われてきた表現の一つですので、
「陶酔」の使い方をマスターすれば、
「気持ちよい」という感情を詞的に伝えられるようになるかもしれません。
ぜひ覚えてみてください。
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