今回は、あまり表に出ていない公認会計士試験の実際の難易度や合格方法について解説していきます。
公認会計士とは
公認会計士とは、会計の最難関資格であり、プロフェッショナルです。法律のプロが弁護士、医療のプロが医者であり、会計のプロは公認会計士であります。そのため、受かるためにはとても難しい試験を突破しないといけません。
どんな仕事をしているのか?
公認会計士とは「会計と監査の専門家」です。会計のプロであることは先述しました。一方で監査のプロとは何でしょう?会社は決算書を作成することが義務付けられています。この決算書は会社が作ります。言い換えると「自分の成績を自分でつける」ことは法律で義務付けられています。そうすると「嘘の申告をする可能性」が出てきます。
そこで公認会計士が組織として「正しい決算書を作っているかをチェック」します。これは「独占業務」です。公認会計士以外が決算書の監査をすることはできません。そのため、会計と監査の専門家になるのです。
税理士との違いは?
監査については先述しました。では、会計とはどんな業務になるのでしょう?公認会計士には税理士資格が自動付与されます。つまり「公認会計士=会計士+税理士」なのです。この税理は申告の代行や節税のアドバイスをします。当然に公認会計士も申告の代行や節税のアドバイスができます。これが会計業務の中核になります。
では公認会計士と税理士の根本的な違いは何でしょうか?一言で言えば、「クライアントの規模」です。税理士の行う税務業務は「中小企業や個人事業主」が主です。しかし公認会計士の行う監査業務は「1部上場企業を中心とする大企業」が主です。
そのため、当たり前に触れている決算書の規模や会社内の内部統制についての理解の得意分野が異なります。
公認会計士試験の難易度・合格率
公認会計士試験は三大難関国家資格と言われるだけあって難易度は高いです。また、試験制度は1次試験の短答式試験と論文式試験に分かれます。短答式試験に合格した人だけが論文式試験を受験することができます。
難易度の高い理由は以下の通りです。
- 科目が多い
- 物理的な勉強時間を多く必要とする
- 受験生のレベルが高い
「会計・監査・税務・法律・経営」を学ぶことになります。科目は6科目になります。また配点の高い科目もあるので実質7科目となります。
短答試験の内容と合格率
短答式試験は5月と12月の年2回に実施され、大きく以下4つから構成される試験です。
- 企業法(理論100点)
- 管理会計論(理論約50点・計算約50点)
- 監査論(理論100点)
- 財務会計論(理論約100点・計算約100点)
時期 | 合格率 | 実質合格率 |
---|---|---|
平成28年5月 | 10.1% | 13.5% |
平成28年12月 | 15.3% | 19.8% |
平成29年12月 | 13.0% | 16.6% |
平成30年5月 | 13.6% | 18.2% |
平成30年12月 | 12.9% | 16.6% |
論文試験の内容と合格率
論文式試験は8月の年1回に実施されます。以下6つから構成される試験です。
- 監査論(理論100点)
- 租税法(理論40点・計算60点)
- 管理会計論(理論約50点・計算約50点)
- 財務会計論(理論約120点・計算約80点)
- 企業法(理論100点)
- 選択科目(理論50点・計算50点)
年度 | 合格率 |
---|---|
平成28年 | 36.3% |
平成29年 | 37.8% |
平成30年 | 35.9% |
ここから分かるように、短答式試験は約6人は約6人に1人が受かる試験、論文式試験は約3人に1人が受かる試験となっているため、短答式試験の方が難易度が高いです。
短答試験の実質合格率は高い
では、そこまで合格が難しいのか?と言われれば、答えは「ノー」です。公認会計士試験は5000時間から10000時間ほど、年数にして3年から5年ほど勉強することになります。
そのため、短答式試験は「お試し受験生が約50%」います。そのため実際に合格することはそこまで難しくありません。
また、これだけ多くの科目を勉強することになるため、勉強の方向性を誤ったり、モチベーションが低い状態で本試験を迎える人も多くいます。そのため、合格するか否かは現実的には「自分との戦い」になります。言い換えると「誰にでも勝機」があります。
公認会計士試験の内容
公認会計士試験は計算科目と理論科目に分けることができます。 計算科目は電卓を使って答えを出す科目です。理論科目は電卓を使わない科目です。
計算問題の内容
計算問題は短答式試験では管理会計論・財務会計論があります。
論文式試験は管理会計論・財務会計論・ファイナンス・法人税・所得税・消費税があります。
管理会計論は簿記検定を受験された方であれば、工業簿記が該当します。簿記検定を受験されていない方であれば、メーカー系の会計がイメージしやすいです。日本ではトヨタ自動車やソニーが該当します。
理論問題の内容
理論問題は全ての科目で出題されます。
短答式試験で勉強する内容は会社法・会計監査・マネジメント・会計基準になります。論文式試験では会社法・会計監査・マネジメント・会計基準・一般教養・法人税・所得税・消費税があります。
法律や基準や一般教養など幅広く学ぶことになるので、日経新聞や専門書が抵抗なく読めるようになります。
公認会計士試験に合格するための独学法
よくある質問の1つに「公認会計士に独学で受かりますか?」という質問があります。
答えは「現実的には不可能」です。周りのライバル達は「小さい頃から予備校に通い慣れて受験を得意とする」人たちです。また、科目が多いため「誰でも苦手科目」があります。その時に独学で解決することは時間的に非効率です。
もちろん予備校に通わず時間をかける方法もありますが、1年でも早く受かった方が経済的によっぽどメリットを享受できます。また、法律の改正も追いついて勉強することになるので、その点からも予備校に通うことが現実的です。
一方で、公認会計士試験は講義を受けた後の次週の時間がとても長いです。この時間は「実質的に独学」になります。
ではどうやって自習を進めればいいのでしょうか?
計算科目の勉強方法
こちらは電卓を叩いてたくさん演習をこなすことに尽きます。短答式試験でも論文式試験でも勉強方法は変わりません。
公認会計士合格者は「電卓をブラインドタッチ」できるほど毎日のように電卓に触れます。また、勉強を進めていくうちに「自分なりの下書き用の書き方」ができてきます。この下書きを書けるようになれば合格は近いです。
簿記検定受験生であれば「設備投資のキャッシュフローの下書き」や「連結会計のタイムテーブル」なんて言葉を聞いたことがあるはずです。この下書きを「初見の問題で書ける」ようになるまで反復演習を繰り返しましょう。
理論科目の勉強方法
理論科目は短答式試験では「暗記」が求められ、論文式試験では「理解」が求められます。
短答式試験の理論問題の特徴として「繰り返し同じ問題が出題」されていることが挙げられます。そのため、予備校の問題集を繰り返し学習することが効率的です。
一方で、論文式試験では「理解力」が求められます。科目間でバラツキはありますが、おおよそ1問で5行から10行程度の論述が求められます。そして短答式試験と違い「同じ問題は出題されない」ことになります。そのため「初見の問題での対応力」を養う必要があります。その時に後ろ支えになってくれるのが「理解力」です。この理解力とは換言すれば人に説明できる力です。会計が分からない人に会計を教えれるように意識しながら普段の講義を受けることが有効です。
公認会計士になるための学校の種類
公認会計士試験合格のためには資格専門の予備校に通う必要があります。大手ではTACや大原があります。この資格専門予備校には自習室や質問できるブースがあるので、教室で講義を聞き、自習室で自習をして、質問ブースで質問をすることになります。
また、地方にお住いの方は通信講座を取り、WEBで講義を聞き、自宅やカフェで自習をし、電話で質問することになります。
通学の場合
通学の場合は教室で講義を聞けるので、カリキュラムに遅れることは少ないです。また、受験仲間も作りやすいです。そのため、スケジュールを死守することを目的に復習をやることになります。また、復習のペースは予備校の模試を目安にすると勉強を効率的に進めることになります。
通信の場合
通信制の場合は、予備校の模試も自宅で受けることになり、モチベーションの維持がとても難しくなります。そのため、地元のシェアオフィスなどを使い、受験仲間を作り、モチベーションの維持に努めることが重要です。
一方で、WEBの授業のため、分からないところを何度も聞くことができるメリットもあります。そのため、モチベーションさえ維持できるのであれば、通学生よりも有利といえます。
まとめ
公認会計士試験は合格率や世間的なイメージで「難しい試験」と言われますが、やることを継続すれば受かる試験です。予備校に通い、先生の言うことを聞けば短期合格すら可能です。
そのため、予備校選びに関しては慎重に行うことが重要になります。 ぜひ、自分にあった予備校や勉強環境を構築してください。
お金や時間的に苦しくても近道はありません。しかし、これだけの知識を約3年間で身に付けさせてくれる試験はその後のキャリアを考えるとコスパはいいです。
ぜひ、公認会計士に興味を持っている方や興味を持った方は挑戦して合格してください。