「対峙」とは「高い山などが、向かい合ってそびえること」または「対立する者同士が、にらみ合ったままじっと動かずにいること」を意味する言葉です。
日常会話では使いそうで案外使わない「対峙」という言葉。その意味をさらに掘り下げたり、似たような言葉である「対決」とはどう違うのか。
さらには「対峙」を英語で表現すると?まで「対峙」という言葉について調べてみました。
どうぞ最後までお付き合いください!
対峙の意味・使い方
【読み】たいじ
【意味】
- 高い山などが、向かい合ってそびえること
- 対立する者同士が、にらみ合ったままじっと動かずにいること
①高い山などが、向かい合ってそびえること
「山など」ということですので、例えば高層ビルとか、大きな木が向かい合ってある場合にも対峙という言葉を使って表現します。例文を見てみましょう。
例文
- 深い渓谷を隔てて山が対峙している。
- 山々が対峙している姿を見て、感銘を受けた。
- 都会は同じようなビルが対峙していて、迷ってしまう。
- 樹齢100年は越えようかという木が、静かに対峙している。
山に限らず、色々な「高いもの」が向かい合っているさまを「対峙」と表現します。後に詳しく解説しますが、対峙の「峙」という漢字は「そばだ(つ)」と読みます。
②対立する者同士が、にらみ合ったままじっと動かずにいること
こちらの意味のほうが、日常会話で登場する可能性が高いです。対立する者は、人であったり、物事であったりします。例文を見てみましょう。
例文
- 昨年負けている相手と対峙し、今度こそはと拳を握った。
- 信玄と謙信が川中島で対峙するシーンは、いつ見てもゾクゾクする。
- 長年の懸案事項にいよいよ対峙し、どこから手を付けるか検討した。
- 全く勉強をしなかったので、テスト用紙と対峙しても、何も浮かばない。
人と人との「対峙」。人と物事の「対峙」。
ただ、その人・事項に直面しただけではなく、「対峙」と表現することでより緊張感・緊迫感が増していることが伝わります。
「峙」が使われる言葉
「峙」という漢字は音読みでは「ジ」ですが、訓読みでは「そばだ(つ)」と読みます。「そばだつ」とは「山などがかどばって高く立つ。そびえる」という意味の他に物事の関係を悪化させる原因の「かどが立つ」という意味もあります。
では、「峙」を使った言葉にはどんなものがあるか、見てみましょう。
- 棋峙
- 峙立
- 聳峙
それぞれ、どんな読み方、どんな意味なのかを解説していきます。
棋峙の意味
棋峙(きじ)とは、「盤上の碁石が黒白相対するように、英雄などが割拠して相対していること」という意味です。
なかなか触れる機会のない言葉ですが、何となくその情景が浮かんでくるような、何ともダイナミックな言葉です。
峙立の意味
峙立(じりつ)とは「そばだつ・そびえる」という意味です。
対峙は向かい合わせで山などの高いものがある、という意味ですがが、峙立は単独で高いものがある、という意味になります。峙立の複数形が対峙、ということです。
聳峙の意味
聳峙(しょうじ)とは峙立同様「そばだつ・そびえる」という意味です。
聳峙という言葉はまず普段の生活で見聞きすることはないですが、こういう言葉もあるんだな、程度に読んで下さい。
ちなみに「そばだつ」とは「山などがかどばって高く立つ。そびえる」という意味の他に「かどが立つ」という意味もあります。
漢字で書くと「峙つ」または「聳つ」となります。つまり、「聳峙」も同じ意味を持つ漢字を重ねた言葉、ということになります。
対峙と対決はどんな違いあるの?
対峙と似た言葉として「対決」があります。相撲の取組を例にとり、二つの言葉の違いを解説しましょう。
まず「対峙」とは対立する者同士がにらみ合っていることですから、相撲でいうところの「仕切り」に当たります。仕切りとは力士同士がにらみ合い、取組前の呼吸を整えたり気合を入れる所作で、まだ相手とは戦っていません。
これに対し「対決」とは「相手と対抗して決着をつけること」という意味です。これは相撲で例えると取組が始まって両者が勝敗を争っている状況となります。
「対峙」と「対決」は似ているようで、全く意味の違う言葉であることが分かります。
対峙の類義語・対義語

では「対峙」の類義語、そして対義語にはどんなものがあるか見てみましょう。
対峙の類義語・対義語は上記「対峙」の意味②の「対立する者同士がにらみ合っていること」という意味の類義語・対義語となります。まずは類義語をみてみましょう。
「対峙」の類義語は次の3つがあります。
- 対立
- 対抗
- 直面
それぞれの類語を例文を使用して解説します。
類語①「対立」
- 懸案事項の解決策を巡り、意見が対立した。
- 親の介護について、姉と対立してしまった。
- 田舎出身の彼とは、価値観が対立してしまう。
類語②「対抗」
対抗(たいこう)とは「互いに勝利を争うこと。互いに張り合うこと」という意味です。ただ単に己の主張を繰り広げる「対立」よりもさらに一歩進んだ、相手を説き伏せようという勢いが感じられる言葉です。
また、勝利というものを前提としたスポーツの場面でも目にすることがあります。例文を見てみましょう。
- 競合店が2千円値引きしていたので、対抗して3千円値引きすることにした。
- 都市対抗野球は、地域同士の争いということもあり、応援合戦も華やかだ。
- 今日の競馬は、本命と対抗で決まり、堅いレースだった。
類語③「直面」
直面(ちょくめん)とは「物事に直接対すること」という意味です。対立や対抗とはまた違う、ただ単に物事に遭遇し、さてこれからどうしよう、という場面で使用されます。例文を見てみましょう。
- 想像とは違った場面に直面し、面食らった。
- お別れの場に直面し、もらい泣きを必死に堪えた。
- 困難に直面してしまったが、こういう時こそ笑顔でいよう。
続いて「対峙」の対義語です。対義語も3つ挙げてみます。
- 回避
- 逃避
- 結託
対義語もそれぞれ例文を使用して解説します。
対義語①「回避」
回避(かいひ)とは「 物事を避けてぶつからないようにすること。また、不都合な事態にならないようにすること」という意味です。対峙と違い、向き合うことすらしないので対義語となります。例文を見てみましょう。
- 酷暑で外回り回避し、午後はデスクワークに励んだ。
- 困難を回避ばかりしていては、いつまでたっても進歩がない。
- 上司は責任を回避したので、私が矢面に立った。
対義語②「逃避」
逃避(とうひ)とは「困難などに直面したとき逃げたり、意識しないようにしたりして、それを避けること」という意味です。現実逃避、などという言葉で一般的に使われます。これも例文を見てみましょう。
- 現実逃避せざるを得ない状況に彼を追い込んでしまったことは、痛恨の極みだ。
- 彼を現実世界から逃避させることが、今は最善の策だ。
- 責任から逃避した彼には、厳しいペナルティーが科されるであろう。
対義語③「結託」
結託(けったく)とは「互いに心を通じ合い、(よくない)ことに当たること。グルになること」という意味です。お互いににらみ合うこともなく、手に手を取って事に当たるのですから対峙とは全く意味が違います。例文を見てみましょう。
- 市長は業者と結託し、甘い汁をすすっていた。
- 取引先の業者同士が結託し、我が社はすっかりダマされた。
- 彼と結託し彼女をダマすことには成功したが、良心の呵責に耐えられなかった。
対峙の英語表現

対峙を表す英単語は「Confrontation」となります。山々の「対峙」も物事や人との「対峙」も「Confrontation」で表現されます。例文を見てみましょう。
例文①:山々が対峙している場合の英語例文
例文②:物事と対峙した場合の英語例文
例文③:人と対峙した場合の英語例文
まとめ
いかがでしたでしょうか。この記事では ①対峙の意味や読み方 ②対峙の類語 ③対峙の反対語 ④対峙の英語表現の4つについてまとめてみました。お役に立てれば幸いです。
対峙という言葉は普段から中々接するようで接しないものです。本当になまじりを決して物事にあたる場合や緊迫感のある相手と遭遇した際に使われる言葉、あるいは山々などの高いものが単に向かい合わせになっている、という場面で使用される言葉、ということがおわかりいただけたと思います。
ぜひこの記事を参考に対峙という言葉を使いこなして下さい!
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