「粛々」は普段はあまり使いませんが、テレビなどで時々耳にします。
意味は「ひっそりと静かにしているさま」ですが、「つつましく」「おごそかに」などの意味も持っています。
今回は「粛々」の意味や使い方、似ている言葉である「淡々」との違いをご紹介します。
意味を正しく理解して、日常生活やビジネスシーンで使えるようにしましょう!
粛々の意味と使い方
【読み】
しゅくしゅく
【意味】
- ひっそりと静かにしているさま
- おごそかなさま
- 引き締まったさま
- つつしむさま
①ひっそりと静かにしているさま
葬式や式典などで物音があまりなく、静かな様子を指します。騒々しくない状態です。
「ひっそりと静かにしているさま」での意味で良く使われる例文をご紹介します。
例文
- 入学式は粛々と行われた。
- 彼は答辞を粛々と述べた。
- 粛々とした会議で大きな物音が響いた。
- 母の葬儀は家族で粛々と行いました。
②おごそかなさま
冠婚葬祭などの式で緊張感のある場で厳粛なさまをあらわしています。
政治家が使うことが多く、日常使う事は少ないです。
例文
- この問題については皆様の声を真摯に受け止め、粛々と進めていきたいと思います。
- あなたはいつも与えられた仕事を粛々と進める人である。
- 華やかな舞台の裏側では目立たない技術のスタッフが粛々と仕事をしている。
③引き締まったさま
緊張感のある式典などで気持ちが引き締まった状態を指します。
例文
- 粛々と入学式が進んだ。
- 会議は粛々進行した。
- 記念式典に参加して粛々とした気持ちになる。
- 彼の結婚式は粛々と行われました。
④つつしむさま
葬儀で、悲しみに包まれている親族の方々に物事を伝えるときに「粛々と進める」と伝えると、つつしんでおこなうという意味が伝えられます。
しずかに心を込めてという状況にあったふさわしい表現になります。
例文
- 告別式は粛々と行われた。
- 弔辞を粛々と述べる。
- 粛々と判決を下した。
- これからの人生は粛々と生きる。
粛々の意味としては「ひっそりと静まっている」「ひっそりと」「厳かにおこなうこと」を表すため、お祭りなどの行事には不向きの言葉です。
また、場面や人の姿勢についても使用します。冠婚葬祭などの部面で礼法、作法によって身を引き締めて行われる場面で使用します。
「粛々」が使われる熟語
「粛々」が使われている熟語は以下のものがあります。
- 鞭声粛々(べんせいしゅくしゅく)
鞭声粛々(べんせいしゅくしゅく)の意味
相手に気が付かれないように静かに馬に鞭を打つさま。頼山陽の詩句「鞭声粛粛夜河を渡る」とあるのが有名です。
川中島の戦で上杉謙信が武田信玄の機先を制すべく、夜に妻女山を下って、敵に気付かれないように馬に打つ鞭の音も静かに千曲川を渡ったことを詠んだものです。
「粛々」と「淡々」の違いは
「粛々」と「淡々」は似ているため、混同しやすいです。違いを理解すれば使い分けられます。
「粛々」は「静かに物事を行う様子」や「身を引き締めて厳しく」と言うニュアンスがあります。
一方、「淡々」 感情はあまり移入せずにこだわりない様子を表します。
粛々の類義語
粛々の類義語には以下のものがあります。
- 「厳粛」
- 「厳か」
- 「粛然」
類語①「厳粛」
厳粛はその文字のイメージ通り、「厳かで心が引き締まるさま。」「厳しくゆるがせにできないさま」「まじめで、きびしいさま」「真剣なさま」「威厳があって、張りつめた気持ちになる様子」これらに表されるように重い雰囲気や人の言動や態度、物事の重大さを表現する言葉です。
例文
- 式場は厳粛な雰囲気に包まれていた。
- 厳粛な事実
- この儀式はとても厳粛なものである。
- 選挙の結果を厳粛に受け止めるべきだ。
類語②「厳か」
厳かの意味は重々しくいかめしいさま、礼儀正しく近寄りがたいさまといった意味です。重圧感があって近寄りにくい雰囲気のある威厳がある様子です。
礼儀や作法を重んじた、立派な振る舞いで近寄りがたい様子を示しています。
例文
- 神社の鳥居をくぐると、厳かな雰囲気に包まれる。
- 卒業式は厳かにそして和やかに行われた。
- BGMを加えたら厳かな動画に仕上がった。
類語③「粛然」
粛然とは、「何の音も聞こえないほど静まること」「礼儀正しいこと」を意味します。
人の声や車の音のような文明の音が聞こえない、静かな雰囲気の事を示し、大自然の中や建物内を問わず、とても静かな空間のことを意味する言葉です。
例文
- 粛然とした雰囲気に驚いた。
- 思わぬタイミングで会場は粛然となった。
- 深夜の駅前は想像以上に粛然としていた。
粛々の対義語
- 「騒々しい」
- 「賑やか」
- 「騒然」
対義語①「騒々しい」
物音や人声が多くてうるさい。騒がしい。ざわざわしている。
大きな事件が続いて起こるなどして落ち着かない。不穏である。平穏な情勢ではなく不安だ。いずれもマイナスなイメージが強いのでネガティブな言葉として使われます。
- 世間が騒々しくなる
- 騒々しくて読書に集中できない
- 車内が騒々しい
対義語②「賑やか」
人などが多く集まって、活気がある様子。物音や人声などが盛んに聞こえるさま。
よく話して陽気なさま。騒々しいに比べると、良いイメージの言葉です。陽気にする、という意味合いもあるためポジティブな表現として使われます。
多くの人が笑い、楽しそうに話をしている様子などを肯定的に表現できます。
例文
- 賑やかな祭り
- 店の中がとても賑やかになった。
- 賑やかな笑い声
- この人はとても賑やかです。
対義語③「騒然」
ざわざわと騒がしいさま。また、不穏で落ち着かないさま。日常の中でも状況を伝えるのに使われることが多い言葉です。
事故や事件などで人々が集まってざわざわしている状況が伝わります。
また、世の中を騒然とさせるような注目が集まるという意味合いもあります。
例文
- 場内が騒然となる。
- 話題騒然となる
- 発砲事件の現場は一時騒然となった。
粛々の英語表現
粛々は「ひっそりと静かにしているさま」という意味なので、英訳すると「quiet」や「silently」と訳すことができます。
日本語では、まじめな、厳粛という意味があるので「solemn」の方がニュアンスとして粛々に近いです。これらの単語を用いた例文をご紹介します。
solemnを訳すとまじめな、厳粛な、荘厳と訳すことができます。solemnを使用した例文を見てみましょう。
solemn
He looked solemn as I told him the story(その悪い知らせを話した時、彼はまじめな顔つきをした)
quiet
Live in peace and quiet(平穏無事に暮らす)
silently
There people offered flowers and prayed silently(そこで人々は花をささげ、黙祷した)
まとめ
日常はあまり使う場面はないと思いますが、冠婚葬祭など厳かな場面では用いることがあります。
ビジネスでも使いますが政治家が使う印象から高圧的に取られてしまいがちです。
「粛々」は本来上から目線という意味はありませんが、政治家などが世論に耳を傾けずに政策を進めていく場面で使われると、高圧的なイメージを与えてしまいます。
相手に意図しない受け取り方をされない為にも、ビジネスシーンでは「粛々」よりも「淡々」の方が無難でしょう。