「贔屓(ひいき)」には、「相手を引き立てる、肩入れする」という意味があります。
「ご贔屓を賜り、誠にありがとうございます」など、ビジネスシーンでも目にする機会が多いはずです。
今回は、「贔屓」の意味や類語・対義語、英語表現を紹介していきます。この記事を読むことで、「贔屓」の正しい使い方が理解できます。
「贔屓」の意味・使い方
【読み】ひいき
【意味】
- 自分のお気に入りの人・物に対して援助や力添えを行うこと
- 後援すること、パトロン
「贔屓」は「ひいき」と読むことが多いですが、もともと中国から日本に伝わったときの「ひき」という読み方をするときもあります。
「後援や力添えを行うこと」という意味があり、特に気に入った相手に対して肩入れすることを表しています。ビジネスシーンでも非常に使う機会の多い単語なだけに、その用例や使い方を理解していきましょう。
「贔屓」の使い方・例文
「贔屓」は「特に気に入った相手に対して肩入れすること」です。
特にビジネスシーンで使われるときは、なんとなくネガティブな印象を受ける方も多いのではないでしょうか。それは、「えこひいき」という言葉があるからでしょう。しかし、本来は「後援する」という意味の通り前向きな言葉です。
では、どのように「贔屓」という言葉を使えばよいのでしょうか。ここでは4つの例文を紹介していきます。
例文
- 今後ともご贔屓のほど、よろしくお願い致します
- いつもご贔屓にしていただき感謝しております
- そのブランドのなかでも特にAという商品を贔屓にしている
- あの上司はB課長に対して贔屓にしすぎており、見ていて気持ちの良いものではない
上記の例文では、上から3つまでポジティブな印象を受けます。一方、最後の例文のように、使い方によってネガティブな印象になる点に注意してください。
「えこひいき」という意味で「贔屓」が用いられる場合、このように悪い意味合いとなります。「えこひいき」には、「不公平」という意味も加わってくるからです。
「贔屓」が使われる熟語
「贔屓」を使って熟語や慣用句になる例は次の4つです。
- 依怙贔屓(えこひいき)
- 判官贔屓(ほうがんびいき)
- 贔屓の引き倒し(ひいきのひきたおし)
- 身内贔屓(みうちびいき)
実は、「贔屓」に別の単語や言葉がつくと、ネガティブな表現(判官贔屓の場合は自分を貶めて使う)になることがほとんどです。
そのため、「贔屓」を良い方向に使うときは、「ご贔屓に」など、相手に対して感謝の気持ちを込めることが欠かせません。
では、以下でそれぞれの熟語・慣用句の意味を紹介していきます。
「依怙贔屓(えこひいき)」の意味
「依怙贔屓(えこひいき)」も「贔屓」と同じように、「相手に対して肩入れする」という意味があります。
しかし、「依怙贔屓」の場合は、さらに「不公平」や「不平等」といった意味も加わるのです。
たとえば、評価する対象が2人いたとして、明らかに一方だけに肩入れするという場合に「依怙贔屓」を使います。
- 例文:あの部長は新人のAさんに明らかに依怙贔屓している
「判官贔屓(ほうがんびいき)」の意味
「判官贔屓(ほうがんびいき)」も、「相手に肩入れする」という意味があります。
「はんがんびいき」とも読みます。ただし、「判官贔屓」は「贔屓」とは異なる条件があります。それが「弱い立場の人に対して」ということです。
「判官贔屓」はもともと、鎌倉時代の武将である源義経が、兄の源頼朝によって倒されたことに多くの民衆が同情したことが由来となります(判官は当時の義経の官職)。
よって、「判官贔屓」は「弱者や敗者に対して」という言葉の背景を持つようになりました。
「判官贔屓」を使う場面は、主に自分自身に対して卑下するときに多いといえます。
- 例文:弱小球団ばかり応援するのは判官贔屓の私らしいといえる
「贔屓の引き倒し(ひいきのひきたおし)」の意味
「贔屓の引き倒し(ひいきのひきたおし)」とは、「あまりにも贔屓の度が過ぎれば、かえって肩入れした相手の立場を悪くする」という意味です。
たとえば、社内でAさんばかり上司から贔屓されていれば、周りの人は決して気持ちよくはないでしょう。すると、「あの人はえこひいきされている」という噂が流れても不思議ではありません。これでは贔屓されていたAさんの立場がなくなります。
ちなみに、「引き倒し」の「ひき」は、「贔屓」の別の読み方である「ひき」が由来です。そのため、本来は「贔屓の贔屓倒し」として使われてきました。
- 例文:部長はAさんが贔屓の引き倒しになっていることに気付いていない。
これじゃあAさんが可哀そうだ
「身内贔屓(みうちびいき)」の意味
「身内贔屓(みうちびいき)」も「贔屓」と同じで、「特定の人に肩入れする」という意味があります。しかし、「身内贔屓」の場合は、「特に身内に、親密な人に対して」という意味が付け加えられます。
「身内贔屓」も「贔屓の引き倒し」に発展しかねないため、部下や周りの人との接し方には気をつけたいところです。
- 例文:あの人の出世は、社長の明らかな身内贔屓によるものだ
「贔屓」と「推し」はどんな違いあるの?
「贔屓」と「推し(おし)」には、どちらも「相手に対して肩入れする」という意味があります。ただ、場面によって「贔屓」を使うこともあったり、「推し」を使うシーンとそれぞれ適切な場合があります。
一般社会で「推し」を使う場合、「アイドルグループのなかでも○○君推し」といったように、芸能人や好きな人に対することがほとんどです。こうしたシーンで「贔屓」という言葉も使うことはあるものの、少し硬い印象があります。そのため、「贔屓」はビジネスシーンなどに限定することも少なくありません。
「贔屓」の類義語・対義語

「贔屓」には、類義語(類語)が3種類、対義語が2種類あります。
- 類語①「愛顧(あいこ)」
- 類語②「お引き立て(おひきたて)」
- 類語③「厚遇(こうぐう)」
- 対義語①「公平(こうへい)」
- 対義語②「冷遇(れいぐう)」
類語①「愛顧(あいこ)」
「愛顧(あいこ)」とは、「贔屓」と同じく「引き立てる、目をかける」という意味があります。ただ、「愛顧」の場合は、「商売人などが客に対して」という条件が付け加えられることも珍しくありません。
それでは、「愛顧」を用いた例文を見ていきましょう。
- いつもご愛顧を賜り、誠にありがとうございます。
- 彼女のご愛顧にありつけるよう彼も必至だ
- 上司の深い愛顧を受けて、その提案が認められた
類語②「お引き立て(おひきたて)」
「お引き立て(おひきたて)」も「贔屓」と同じく、「肩入れする」という意味があります。顧客への挨拶として用いられることも多く、ビジネスシーンでも使う場面は多いでしょう。
- いつもお引き立ていただき感謝致します
- これからも今まで以上のお引き立てを賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます
- 何分お引き立てを願います
類語③「厚遇(こうぐう)」
「厚遇(こうぐう)」とは、文字通り「手厚くもてなす」という意味です。ビジネスシーンでもよく用いられ、その場合は「思っていた以上の待遇を受ける」といった意味も持ちます。
- 過去の恩義に対して厚遇をもってむくいる
- どうしても会社から厚遇されているとは思えない
- この厚遇を逃さないようにしたい
対義語①「公平(こうへい)」
「公平(こうへい)」とは、「いずれにも偏らず平等に対処すること」という意味です。「贔屓」には、「不公平」というネガティブな意味が加わることもあり、「公平」はその場合の対義語となります。
- この会社では、一見皆公平に扱われているように見える
- 昔は今よりも、ずっと日本人が公平に見られていたように思う
- 誰も彼も公平というわけにはいかない
対義語②「冷遇(れいぐう)」
「冷遇(れいぐう)」とは、「冷たい態度で扱うことや待遇」という意味です。「厚遇」の対義語でもあります。「肩入れする」という意味のある「贔屓」とは反対の表現として用いられます。
- 組織のルールから外れる行動をとったことで冷遇された
- 地方の労働管理局に彼が冷遇されている事実を告げた
- 当時冷遇されていたのも今となっては良い経験になったと思う
「贔屓」の英語表現

「贔屓」を英語表現すると、「favor」という単語が当てはまります。また、「贔屓」の使い方によっては、「patronage」や「partiality」という言葉も該当します。
ここからは、それぞれの英語表現の意味を確認していきましょう。
「引き立て」と「特別に好む」の意味で訳されることが多い
「贔屓」の英語表現は次の3通りです。
- favor:引き立てる、特別に好む
- patronage:引き立て、ひいき
- partiality:えこひいき
それぞれ細かい意味合いや用例が異なるので、以下で詳しくお伝えしていきます。
例文①:「favor」
「favor」には「引き立てる、特別に好む」という意味があります。「贔屓する」という動詞表現で用いる場合は、この「favor」が最適です。
- win a person’s favor
人の引き立てを受ける、人に気に入られる - through favor
えこひいきして
例文②:「patronage」
「patronage」は、「ひいき、引き立て」という意味です。特に、「贔屓」を名詞で表現するときに向いています。また、「店舗や会社などを贔屓する」という特定の物を指定するときも、この「patronage」が用いられます。
- The hotel has a large patronage.
そのホテルは得意客が多い - with an air of patronage
恩着せがましい態度で
例文③:「partiality」
「partiality」は、「えこひいき、偏愛する」という意味があります。「贔屓」よりもネガティブで、あまりにも強い愛情を表現するときに使うことがほとんどです。
- judge without partiality
公平に裁く - She has a partiality for sweets.
彼女は甘いものが大好き(偏愛的)だ
まとめ
今回は、「贔屓」という言葉の意味や使い方についてお伝えしてきました。
「贔屓」には「引き立てる、肩入れする」という意味があります。ただ、使い方によってポジティブとネガティブどちらにも変化するため、よく注意してください。ビジネスシーンで使うときは、「ご愛顧」など丁寧な表現で用いるようにしましょう。
また、最後に、「贔屓」の類語や対義語、英語表現についてもおさらいしておきます。
- 類語①「愛顧(あいこ)」
- 類語②「お引き立て(おひきたて)」
- 類語③「厚遇(こうぐう)」
- 対義語①「公平(こうへい)」
- 対義語②「冷遇(れいぐう)」
- 英語表現①「favor」
- 英語表現②「patronage」
- 英語表現③「partiality」
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