「布石(ふせき)」とは、「将来のために準備しておくこと、備えること」という意味があります。
「布石を打つ」という熟語で使う機会が多い一方で、「布石を置く」「布石を敷く」という間違えやすい表記にも注意してください。
今回は、「布石」の意味や正しい使い方、類語・対義語などを紹介していきます。最近では、仕事やビジネスシーンでも使われることが多くなったため、しっかりと正しい意味を覚えておきましょう。
「布石」の意味・使い方
【読み】ふせき
【意味】
- 囲碁において序盤に要所へ配置する石の並べ方、またはその並び
- 将来に備え手を打っておくこと、その準備
「布石」とは、もともと囲碁で使用されていた言葉です。囲碁の勝敗は、序盤にどれだけ最善手を配置しておくかにかかっています。そのため、後々の展開を考え、あらかじめ最善の石を並べることを「布石」といいます。
この石の並べ方から転じ、今では「将来に備え手を打っておくこと」という意味で「布石」という言葉が使用されるようになりました。
「布石」の使い方・例文
「布石」は「将来のために(現段階から)手を打っておく」という意味があります。この言葉が使用されるのは、主に「布石を打つ」という表現が一般的です。
ここでは、「布石を打つ」という表現を使った例文を紹介していきましょう。
例文
- その営業マンは、来週の商品説明会に備えて布石を打っておいた
- 年を重ねるほど、若いときに人間関係の布石を打っておくことの重要性を知る
- あえてミスをする布石を打つことで、彼はその試合に勝利した
- 半世紀も前に布石を打った政策が今になってようやく芽生えようとしている
このように、「布石を打つ」という言葉の裏には、将来の物事が自分にとって良い結果になるという意味が込められています。
一般的に、「布石」という言葉を使用するときは、その後に必ず「打つ」が来ると覚えておきましょう。勘違いされやすい表現として、「布石を置く」「布石を投じる」「布石を敷く」という言葉は間違いです(正しくは「一石を投じる」「伏線を敷く」など)。
「布石」が使われる熟語
「布石」という単語が使用される熟語(慣用句や複合語も含む)は、次のように2つの使い方が一般的です。
- 布石を打つ
- 布石を置く
「布石を打つ」の意味
「布石を打つ」とは、「将来を見越して最善の手を用意しておくこと」という意味で用います。また、「その結果は、○○という行動が布石となった」というように、単純に「布石」という言葉も同じ意味を持ちます。
「布石を置く」の意味
「布石を置く」という熟語は、「布石を打つ」と同じ意味で用います。しかし、もともと囲碁の石から派生した単語でもあることから、「置く」よりも「打つ」と表現する方が適切です。
「布石」と「伏線」はどんな違いあるの?
「布石」とよく似た言葉として、「伏線(ふくせん)」という単語があります。
伏線の熟語には、「伏線を張る」という表現があり、主に「物事の先の展開を暗に示唆する、ほのめかす」が意味として当てはまります。
一方、「伏線を張る」には副次的な意味もあり、「将来に対する備え」という表現も一般的です。どちらかといえば、「将来の備え」という意味で「伏線」を使用している方が多いのではないでしょうか。
「将来の備え」という意味では、「布石を打つ」とほとんど同じです。しかし、「伏線」の本来の意味は、実際に行動するのではなく、(将来の物事について)暗示する・ほのめかすというニュアンスが強いので注意してください。
「布石」の類義語・対義語

「布石」という言葉には、次のように3つの類義語(類語)と2つの対義語が存在します。
- 類語①「手はず」
- 類語②「下準備」
- 類語③「(お)膳立て」
- 対義語①「準備不足」
- 対義語②「始末」
類語①「手はず」
「手はず」とは、物事を行うときの順序や段取り、手順のことです。「手はずを整える」「手はずが狂う」といった熟語がよく用いられます。物事を前もって準備しておくという意味では、「布石」によく似ているといえるでしょう。
- 物事がうまく進むよう手はずを整える
- もう手はずは済んだ
- そのプロジェクトは次のような手はずとなっている
類語②「下準備」
「下準備」とは、物事を行う前にあらかじめ行っておくことを表します。「下ごしらえ」ともいい、人の行動に限らず、物を用意しておくという意味が一般的です。
- 料理は下準備が味の決め手となる
- プレゼンの下準備のため資料に目を通した
- その視察は競合調査という目的のほか、企画会議の下準備という意味もある
類語③「(お)膳立て」
「(お)膳立て」とは、「食事の準備をすること」という意味のほか、「すぐに行動できるよう準備する」ことも表します。
「布石」とよく似た言葉ですが、少しだけニュアンスが異なるので注意しましょう。「布石」はどちらかといえば自分自身で環境を整えることを意味する一方、「(お)膳立て」は、他の人が成功するよう後押しするという意味合いが強いです。
- 誰かが私たちをお膳立てしてくれたみたいだ
- 吉沢のゴールを加藤がお膳立てした
- 実は、この会議は課長のお膳立てがあったからこそなんだ
対義語①「準備不足」
「準備不足」とは、物事の備えが不足している、または欠けていることです。将来のために布石を打てるのも、しっかりとした準備があってこそといえます。
- 準備不足のまま試合に勝てるとは思えない
- 脅威に対する準備不足があったことを見逃してはならない
- あまりに準備不足であるがゆえに、講演は失敗に終わった
対義語②「始末」
「始末」とは、物事の終わりや締めくくりを表す言葉です。「布石」には「準備」という意味合いが含まれているため、物事の終わりである「始末」も対義語として扱われます。
- 愛嬌がない上に学識もないのでは始末が悪い
- 双方ともに自分の意見が正しいと思っているから始末に負えない
- 他人の意見を聞かなかった結果がこのような始末である
「布石」の英語表現

「布石」という言葉は、英語で「preparation」と表現します。囲碁の布石を表すときは、「the opening moves in a game of go」という表現もしますが、「物事の準備をする」という場合は「preparation」が最適です。
また、「布石を打つ」は、「lay the foundations」という英語表記となります。
「準備」と「備え」の意味で訳されることが多い
「布石」の英語表現に「preparation」が使われることが多いように、基本的に「準備」や「備え」という意味で訳されることが一般的です。また、「foundations」には「基礎」や「基盤」といった意味があります。
例文①:「布石」の英単語
「布石」を単純に「preparation」として使う場合、次のような英語例文となります。
- I did little preparation for the examination.
(試験のための準備をほとんどしなかった)
例文②:「布石を打つ」の英単語
「布石を打つ」と熟語で表現するときは、次のような英語例文が使えます。
- lay the foundations for future development.
将来の発展のために布石を打つ
まとめ
今回は「布石」という言葉の意味や使い方についてお伝えしてきました。
もともと囲碁で序盤に使う石の配置方法を表していましたが、そこから「物事の前準備を行うこと」という意味で広く用いられています。「布石を打つ」という熟語が一般的ですが、よく使う「布石を置く」「布石を敷く」という表現は間違いです。
また、「布石」の類語や対義語、英語表現についてもおさらいしておきましょう。
- 類語①「手はず」
- 類語②「下準備」
- 類語③「(お)膳立て」
- 対義語①「準備不足」
- 対義語②「始末」
- 英語表現①「preparation」
- 英語表現②「lay the foundations」
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